遺贈寄付が広がって欲しい

社会制度、インフラ、社会ライフブログ

少し前のNHKの番組「クローズアップ現代」で「遺贈寄付」を採り上げていました(「あなたのお金が社会を変える 広がる“遺贈寄付”」)。知らない人がまだまだ多い制度なので、こうした視聴者が多い番組でフィーチャすることはとてもいいことです。

遺贈寄付とは、亡くなった後に残る財産を相続人以外の団体などに寄付を行うことです。その件数は右肩上がりに増えていて、令和3年には973件、総額約278億円にのぼっているそうです。件数と金額のバランスが普通の寄付とは桁違いなのが明白ですね。

「人生の最後に社会貢献 遺贈寄付で思いを残したい」という意思の大きさにはそれだけインパクトがあるということが分かります。放送では、能登半島地震の被災地で医療支援活動を続けているNGOの人が、「遺贈寄付があったからこそすぐに活動できた」と話しているのを聴き、「なるほどスピードの観点でも優れているのか」と感じました。

ほかにも「独身で相続人がいない人だけでなく、子どもがいる人の中にも遺贈寄付を選ぶ人がいる」という話が伝えられ、日本も少しだけ成熟社会になったのかな、と感じました。

それでは、実際に遺贈寄付を行うにはどうすればよいのか?興味を持った人が抱く疑問には次のように答が用意されています(クローズアップ現代の「取材ノート」から)。主に4ステップです。

相続人と財産を把握する

まずは、自身の相続人が誰なのかを把握し、どんな財産があるかを確認。配偶者は常に相続人となり、子、親、きょうだいの順で相続人となる。相続人がいない場合は、放っておけば国庫に帰属する。

自分の財産の行き先を決める

整理した財産のうち、何をどれだけ、どこの団体へ寄付するのかを考える。自分の思いに近く共感する団体を選ぶことで、満足度の高い遺贈寄付につなげることができる。不動産や全財産まるごと寄付がしたい場合は、受付可否を事前に寄付先に相談する必要あり。

遺言書を作成

(相続人に寄付を頼んでおくことも可能だが)確実な実行のためには遺言書の作成が有効。遺言書には公証役場で作成する「公正証書遺言」と、自ら手書きで記す「自筆証書遺言」がある。いずれも司法書士や弁護士などの専門家に相談して作成することがお薦め。遺言執行者を選任しておくことでトラブルを防ぐことにも繋がる。

(本人死亡後に)遺言執行者が手続き

逝去の連絡を受けた遺言執行者は相続財産の状況を調査し、相続人や寄付先へ連絡をして手続きを行う。

留意点が1つ。自分の財産なので遺贈寄付の指定は自由にできますが、子どもなど相続人の「遺留分」という、法律で守られた相続財産の最低保証額に配慮した慎重な配分が必要です(兄弟や甥姪には遺留分はない)。要は、「遺留分」を無視して全額を寄付しようとするとトラブルになり得るということです。詳しくは専門家に相談するのがよいですね。

寄付先が決まっている場合は、直接問い合わせるのがベストでしょう。大きな団体だと、遺贈寄付の窓口があるところもあります。どんな種類の寄付が受け取ってもらえるのか?(不動産や、家具など現物は受け付けないところも結構あります)。寄付をしたとしたらどのように使われるのか?気になることは事前に確認しておくと安心です。

寄付先を選ぶところから相談したい場合(自分の意志や思いがはっきりしない場合)は、遺贈寄付の相談事業を行っている団体もあり、そちらに問い合わせもできます。

  • 日本承継寄付協会
  • 全国レガシーギフト協会
  • 日本財団

※各地のコミュニティー財団や社会福祉協議会、各宗教団体、遺言信託を担う信託銀行、クラウドファンディング企業なども遺贈寄付の相談事業を行っていますが、我田引水的な誘導があり得るので、慎重に考えられたほうがいいと思います。

いずれにせよ、この機会に大切な財産を誰にどう残すのかをじっくり考えてみてはどうでしょうか。こうした「遺贈寄付」の善意の輪が世の中に広がるといいですね。